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03 芝浦工業大学 村上雅人学長

学生たちよ、世界に飛び出し
イノベーションを起こす研究者たれ

私立の理工系大学で唯一、SGU(スーパーグローバル大学)に選ばれた芝浦工業大学。海外に送り出した留学生数は、2009年度の66人から2014年度の511人へと大躍進。2023年には学生の100%を海外に留学させると目標を掲げています。その真意は何なのでしょうか。村上雅人学長にうかがいました。(以下、敬称略)

狭い研究室に閉じこもっていたのでは
イノベーションは生まれない

Q:ここ数年、芝浦工業大学の留学実績は前年度から倍増など快進撃を続けています。また、平成35年までに100%の学生を海外に送り込むと数値目標を掲げておられます。理科系の学生はあまり留学をしたがらないという先入観を打ち破るものですが、芝浦工業大学が留学に力を入れる理由は何でしょうか。

村上:留学、ことに英語を身につけるというと文系の学生の話だと思われがちですが、私は、理工系の人間にこそ留学は必要だと思っています。科学技術の世界は境界のない世界共通の学問です。技術の進歩には「新しい視点」が必要です。そのためには世界に出て、さまざまな人とコミュニケーションをし、刺激を受けることが何より大事です。イノベーションは、ダイバーシティからしか生まないのです。

Q:留学に否定的な方からは、日本の科学技術はすでに最先端なのだから、わざわざ海外で学ぶ必要はない。日本で理工系の大学を卒業すれば就職には困らない。留学をしたら、むしろ就職には不利だとよく聞きますが…。

村上:狭い研究室にこもっているような研究者に、最先端の研究ができるはずがありません。世界に出て活躍できなければ本当の理工学者にはなれません。
私自身が高校時代にアメリカに1年間留学しました。そのときの恩師に「これからは世界に出て行かなければダメだ」と言われ、強く影響を受けたからです。周囲には留学で1年遅れるとその後の就職や出世の妨げになると言われ、大反対されました。しかし実際にはアメリカ留学のおかげで、その後、研究者として大変いい人生が送れたと思っています。
企業の採用担当者に話を聞いたら、皆、「欲しいのはグローバル人材だ」と言います。理系の大学生は就活をしなくてもいい企業に就職できるというのは昔の話。日本はもはや成熟期にあり、さらなる成長のためには、世界に出て他国の人たちと連携し、ともに成長するという意識が必要です。

ベトナムハノイでのフィールドトリップ

きっかけを与えることで、学生は劇的に変わる

Q:グローバル化に対する学内の意識改革に苦労されている大学も多い中、芝浦工業大学の成功の裏にはどのような努力があったのでしょうか。

村上:トップだけが声を上げてもだめ。グローバル化の必要性を大学全体に浸透させることが大事です。教職員はもちろん、保護者にも直接講演会などを開催して、繰り返し発信し続けてきました。
学生に対しては、きっかけを与えることが何より重要であり効果的です。長期留学だけでなく、短期の海外研修、語学研修など、さまざまなプログラムを用意しています。
単に海外に送るだけではだめで、教員がしっかりとプログラムを設計しなければ留学は成功しません。2週間程度のグローバルPBL(Project Based Learning:問題解決型学習)では、プロジェクトマネジメントの専門家も交え、課題の提示からグループワークによる問題解決、最終プレゼンまで、学生たちを指導します。グローバルPBLは短期間ですが、大変充実したもので、参加した学生は劇的に変わります。最初は英語ができない不安を抱えての出発ですが、身振りでも筆談でもとにかく海外の学生と交流できたことが自信になり、「もっと英語ができればわかり合えたのに」という思いが次の学びへのモチベーションになるのです。

Q:10年後には、留学生を100%にするという目標に対してはどのようなことをされていますか?

村上:英教員たちに協力を得てプログラムを増やし、学生の選択肢を増やすことを考えています。一番ネックとなるのは費用。学生たちになるべく負担がかからない方法を検討しています。例えば、韓国は費用が安く抑えられる上、日本から近く時差もない。しかも韓国の学生たちは英語が堪能です。本学の学生にとって、いい刺激になるのではないでしょうか。

ウィーン工科大学の研究室にて

産学が連携して工学人材を育てるべき

Q:芝浦工業大学では、国際産学連携コンソーシアムを構築するなど、実践的な取り組みが多いですが狙いは?

村上:工学人材の育成は、大学内だけではなく産業界と連携するべきです。実は教育に関心がある企業や団体は少なくありません。学生も、企業との共同研究は刺激になるし自信にもなる。資源のない日本が、世界の中で存在感を発揮するには人を育てるしかありません。大学だけでなく産学で協力し、工学人材をともに育てよう、それが将来的には産業界にも役立つ。企業からPBLの課題を出してもらって、学生がそれに取り組むというプログラムも増やしたい。すでに、JETROやJICAなどからも一緒にやりたいという提案もいただいています。

Q:今後の展開について教えてください。

村上:今後は、各学科の先生方に協力を得てPBLのプログラムをもっと増やしていきたい。個別にヒアリングをすると、やってみたいという先生方は少なくありません。将来的には全学科で取り組みたいですね。
提携先も積極的に増やします。東南アジアの5つのパートナー大学とコンソーシアムを結成し共同研究などを行っていますが、東南アジアでも教育のグローバル化には大変関心が高く、PBLの話をすると、ぜひ参加したいと言ってくださいます。
海外の大学だけでなく本学は工学院大学、東京電機大学、東京都市大学、東京理科大学などの他の理工系大学とも連携し、PBLを協働で行っていきたいと考えています。国内外に関わらず、他大学との交流は学生にとって刺激になることがわかりました。学生は、一つの研究室にこもっていてはいけない。今後も大学側でさまざまなプログラムを用意して、学生たちが外に目を向けるきっかけを作りたいですね。
私立の理工系大学で唯一SGUに選ばれた本学として、われわれの事例を、他大学にも展開できるように連携していくことが使命だと考えています。

Q:ありがとうございました!

グローバル教育最前線キーワード

SGU「スーパーグローバル大学」
文部科学省が行う「スーパーグローバル大学等事業」で、世界レベルの教育研究を行うトップ大学や、先導的試行に挑戦し我が国の大学の国際化を牽引する大学として選ばれ、支援対象となっている大学。「トップ型」(世界ランキングトップ100を目指す力のある大学)と、「グローバル化牽引型」(これまでの取組実績を基に更に先導的試行に挑戦し、我が国社会のグローバル化を牽引する大学)の2タイプがある。「トップ型」13校、「グローバル化牽引型」24校の合計37校が指定された。
PBL(Project Based Learning:問題解決型学習)
学生は1グループ5人程度のチームを構成し、与えられた課題について、自ら計画を立て、自らプロジェクトを実行する。この過程で、学生は、課題解決能力、プレゼンテーション能力、論理的思考力、モデリング能力、デザイン力など、座学では得られない実践的な力を身に付けることができる。
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