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トップ > 企業の人事に聞く > vol9.株式会社日立製作所

企業の人事に聞く 企業の人事担当に聞く、グローバル時代に求められる人材像

株式会社日立製作所 人財統括本部 人事勤労本部長 迫田 雷蔵様 人財統括本部 人事勤労本部 タレントマネジメント部 部長代理 大竹 由希子様

今回のインタビュアー(トビタテ!日本代表生)

早稲田大学 宮本まどか 金沢大学大学院 関口祐太

製品の作り方はグローバルで検討し、
ローカルのマーケットに適合する形で投入

Q:「トビタテ!留学JAPAN」への御支援ありがとうございます。まずは御社のグローバル事業展開について教えて頂けますか

迫田: 幅広い分野の社会インフラを支えるメーカーである日立グループは、「社会イノベーション」という旗印を掲げて事業を展開しています。わかりやすく言えば、「世の中を変えていく」事業を中心に、しかもそれをグローバルにという方向で進めています。国内・海外売上比率も海外が48%に達しており、これを今後さらに比重を増やしていこうとしています。
事業をグローバル化するということは、単に売る相手や車輛を作る場所が国内から海外になるという点だけではありません。例えば、日本では鉄道会社に車輛を納入すれば、その後のことは鉄道会社がおこなうというのが基本です。しかし海外で鉄道事業を進めるとなると、事業のファイナンスから保守やメンテナンスまで事業全体を作るという関わり方が多くなります。世界中で最も効率的に当社の製品やサービスを提供するにはどうしたらよいか考え、事業を作り上げていくという発想が必要です。
また、グローバル化と言いましたが、各々のマーケットは基本的にはローカルです。イギリスで鉄道を作るのであれば、イギリスの文化や嗜好に合わせなければ、受け入れてもらえません。ですので、サービスの提供の仕方や製品の作り方はグローバルで検討し、ローカルのマーケットに適合する形で投入する、という流れになります。

人事制度は日本中心の発想からグローバル視点に転換

Q:御社において、「グローバル人材」に対してどのように取り組まれていますか。

迫田: 上記のような状況下で、今までの日本から人財を現地に送り込むというのではなく、現地の優秀な人財を採用し、育成し、現地で活躍してもらうということが基本となります。ただし現地で採用した人財を現地に縛り付けるということはありません。グローバルな全体最適の観点からシンガポールで採用した人財を、フィリピンやインドネシアで働いてもらう場合も出てくるでしょう。
これまでのように日本人が現地に責任者として駐在する必要性は少なくなってくると思います。受け手として日本で働けばいい場合もあるでしょうし、現地の人が活躍できるように支援するという仕事もあると思います。それは事業の特性や発展段階などに応じて変わっていけばいいのだと思います。

宮本: 私はドイツと韓国に留学をして、技術者の職業観の各国の違いについて学んできました。今までのお話を伺っておりますと、グローバル化に対応して日本発から現地発の仕組みに変えていくとのことでしたが、日本の良さとしてあえて残した取り組みはあるのでしょうか。

迫田: もちろんあります。例えば、新卒採用は日本式の長期雇用を前提とした人財確保手段ですが、当面維持していくつもりです。なぜなら、技術を駆使して新たな価値を創造することを企業価値としている当社として、技術を蓄積していく仕組みを作ることは重要であり、そのための人財は長い期間をかけて育成をしていきたいからです。
一方でその場合、日本の旧来の仕組みを押しつけかねない危険性がありますね。そこで当社では、グローバル人財マネジメント戦略を2011年から進めてきました。これは約25万人分のデータベースを作り、5万人を超えるマネージャー以上の人財の格付けを行い、パフォーマンスマネジメントやタレントマネジメントを世界共通の基準で進めるという取り組みです。つまり、これまでの日本中心の発想からグローバル視点に転換し、グローバルに適用できる制度をまず作り、それを日本を含めた各国に展開するという方向に変わってきています。まだ変革途上にあり完全なものではないですが、どの国でも同じ基準で評価をするという方向に確実に変わりつつあります。

大竹: 当社は現在、日本で年間約600名の新卒を採用しています。そのうち500名が理系で、100名が文系です。グローバルという観点では、外国人留学生を積極的に採用しようとしており、600名のうち約10%は外国人という目標値を設けて採用活動をおこなっています。これは会社としてダイバーシティを重視している部分が大きく寄与しています。というのも、前述の通り海外売上高比率を見ても当社のビジネスのグローバル化は進んでおり、世界各地のお客様、取引先は男女も国籍も関係ないという状況が当たり前です。そんな中、本社が日本人だけで構成されていてよいのだろうかということで、外国人比率を高める取り組みを進めています。

関口: 僕はロシアの大学で研究留学をしていましたが、自身がそこでなすべきこと、学生でいえば勉強や研究、社会人でいえば仕事への価値観の違いに驚きました。そういった文化の違いから来る就業観念の違いにはどう折り合いをつけていくのでしょうか。

迫田: これに関してもその国の文化を尊重してそれぞれに対応する、ひいて言えば多様性を認めるというということだと思います。私はアメリカでの駐在経験を経て、アジアを担当していたわけですが、欧米はキリスト教が文化の根底にあるので共通項がありますが、アジアは国によって文化が全く異なります。先ほど、人事制度については一本化を目指して進めていくと言いましたが、社員の日々の暮らしに根差す福利厚生の部分に関しては各国でその国の文化に合わせてカスタマイズしていく必要があります。
一方で、同じ日立グループで働く同志として、一つの目標に向けて進んでいかなくてはなりません。当社では企業理念である「日立精神」を各国の言語に翻訳し、当社で働いていただく上での共通の価値観を醸成しています。ちなみにこういった企業理念は海外の人には非常に受けが良く、現地法人のある国々では様々な方法でこれを社員に浸透させています。

留学は自身にとって革命的と言ってもいい大きな変化のポイント

関口: 学生が留学するにあたって、こんなことを学んできてほしいという点はありますか。

迫田: 何より、日本できる経験とは違う経験をしてきてほしいですね。日本にいると気づかない点がたくさんあると思うので自分が生きてきた、経験してきたものとは違う世界を見るというのが一番だと思います。私自身も最初にアメリカに研修で行った時の経験がそれ以降のキャリアにとってすごく大きかった気がします。違う考え方をする人がいる、違う生活がある、違う社会があるということを経験することはとても大事なことです。最初の壁を越えることはとても大変ですが、1つ越えてしまえば、そこから先は1つ越えるごとにハードルが下がるように感じます。そういう意味で、最初の第一歩としての留学は、革命的と言ってもいい大きな変化のポイントなのではないかなと考えています。

関口: 海外だと、自分がやりたいことを決めて就職する学生が多い一方、日本の学生はそれを学生のうちに見つけて就職している学生は少ないように感じます。

大竹: 海外の学生はインターンシップをうまく利用しているように感じています。日本でもインターンシップが浸透してきましたが、こういった働くイメージを持つ機会が学生時代にもっと多く得られれば良いと思います。

迫田: 自分の武器は何かという意識は重要だと思います。そういった意味では専門性を身に着けることは重要ですね。当社には技術の指導のために、海外に赴く人財が多数います。ドイツ語、中国語、スペイン語、もちろん英語もできるというような人財が2、3年現地で暮らして現地で現地の社員とともに1つのものを作り上げます。一方で語学ができなくても腕がある、つまり専門性がある人材は現地に行ってもリスペクトされます。そういう人の話は、現地の人も真剣に聞こうとするので通じます。海外でビジネスをやるのであれば当然、語学が必要です。でも語学力だけあっても、相手にはされません。専門性がないと通用しないのです。専門性を持っている人であれば、言葉は下手でも「こいつは何か持っているから、聞いといた方がいいだろうな」と現地の人もわかるものです。当社のような事業では、どんなに優れた人格を持っていても、技術がないと実現したいものを実現できません。心と腕がセットになって初めて現場が言うことを聞いてくれます。ですから、優秀な設計者ほど現場に通っています。それは現場から認められ信頼されないと、設計者の言う通りに作ってくれないからです。そういった信頼関係を築く上でも、専門性という武器を持つことは重要ではないかと思います。

インタビュアー紹介
(トビタテ!日本代表生)

氏名:関口祐太
大学・学部:金沢大学大学院自然科学研究科数物科学専攻
渡航先:ロシア
留学先:Kazan Federal University
留学期間:2015年9~2015年12月
留学先で学んだテーマ:フローティングゾーン法による単結晶の育成

取材後記:
グローバルな社会で生きるためには、様々な違いを理解して、ローカルのニーズを理解して適応することが大切であると教えて頂きました。お話を進めていく中で、私の留学で学んだ文化や考え方の違いを知るという経験は、環境に適応するための必要な経験であったと考えています。経験してきたことを生かすと同時に、よりたくさんの違いをこれからも経験して、ローカルのニーズに応えられる人財になりたいと考えています。

氏名:宮本まどか
大学・学部:早稲田大学商学部
渡航先:韓国、ドイツ
留学先:Korea University/Goethe Institute
留学期間:2014年8月~2015年2月
留学先で学んでいるテーマ:
職人の魅力の発信について

取材後記:
職人というテーマで留学をした私としては、専門職の多い企業の人事の方が専門職のことをどのようにお考えなのか、とても気になって取材をさせて頂きました。「例え、その国の言葉が上手に話せなかったとしても、本当に腕の立つ人であれば、現地の人も一目置く。」という迫田さんことばが印象的でした。海外に通用する人間になるために、重要なのは言語ではなくて、その言語で伝えられる何か、あるいは伝えたい何かを持っているかどうかなのだと改めて認識しました。

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