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教育のグローバル化最前線 留学支援に積極的な大学等の最新情報を取材
01 愛知県立時習館高等学校

研究発表会や短期交換留学を通じ、どこにいても
自分の意見を持ち、伝えられる真の国際人を目指す

江戸時代の中期、宝暦2年(1752年)に豊橋吉田藩の藩校として開校された時習館を起源とする、愛知県立時習館高等学校。長い歴史と伝統があるばかりでなく、新しいことにも果敢に挑戦しています。スーパーサイエンスハイスクール(SSH)、スーパーグローバルハイスクール・アソシエイト校に指定され、SSHと学校独自で行っている英国及びドイツの姉妹校との国際交流を融合させた、高いレベルのグローバル教育を実践しています。その全容についてうかがいました。

国際人育成の取り組みの全体像について

Q:時習館高等学校の教育目標の一つに「国際人としての資質を持った人間を育成する」 という言葉がありますが、そのために取り組んでいらっしゃることの全体像を教えてください。

時習館高校:本校では、次の二つの取り組みにより国際人の育成を目指しています。一つは、学校独自に英国及びドイツの学校と姉妹校提携を結んでの、生徒の短期交換留学です。もう一つは、文部科学省のスーパーサイエンスハイスクール(SSH)(※1)事業「科学技術人材育成重点枠」の指定をいただいての、英国への生徒の派遣と『日英独の高校生による科学技術に関する研究発表会』の開催です。
現在は、以上の二つの取り組みにより、日本、英国、ドイツの姉妹校トライアングル関係を活用して、日頃よりメールでの情報交換や学術交流を実施しています。このようなグローバル教育では、活動するステージが国外へと拡大し、自己の世界も新たな世界へと広がり、深まります。そこで本校の生徒には、英国やドイツの姉妹校との交流において、与えられるのを待つのではなく、自ら学ぶ力に目覚め、主体的に交流する姿勢を養わせています。グローバル教育は生徒たちが自ら学ぶ喜び、未来に対する期待や楽しみを与えてくれます。

教員の取り組みについて

Q:教員の皆さまは、国際人育成のためにどのような取り組みをされていますか?

時習館高校:本校教員は、日頃より姉妹校の先生とメールで情報交換をするとともに、訪問時には互いに積極的なコミュニケーションを図っています。姉妹校の先生のホームステイの受け入れは、本校教員の協力を募ります。受け入れをした教員から「姉妹校の先生とのコミュニケーションを契機に、英語を学ぶ意欲がとても高まった」等の声を多く聞きます。

留学プログラムについて

Q:貴校オリジナルの留学プログラムの現在と今後の展望について教えてください。

時習館高校:現在は相互に1週間の日程(受け入れは10月、派遣は3月)で訪問をしています。各校を訪問して交流を図るだけでなく、名所や史跡の見学を通して、各国の歴史や文化、風土を知ることも積極的に行っています。今後は、現在の形態をベースとしながら学校間でより良い交流のための協議を継続的に行い、双方の生徒にとってより実りのある交換留学プログラムにしたいと考えています。

姉妹校締結への道のりについて

Q:姉妹校締結への道のりや、コツについて教えてください。

時習館高校:平成21年10月に、本校の同窓生(日本の大学教授)の紹介により、英国ロンドンのセント・ポールズ校から生徒3名と教員1名を学校訪問として本校へ2日間迎え、22年の3月に本校の生徒4名と教員1名をセント・ポールズ校へ派遣しました。
この機会を利用して、22年6月から姉妹校提携に向けての協議を重ね、23年1月にセント・ポールズ校は本校初の姉妹校となりました。提携にあたっては、本校がSSH校であること、学校の歴史が当時、藩校として創設されてから257年目であったこと等が高く評価されました。23年9月にはセント・ポールズ女子校とも姉妹校提携を結びました。さらに、24年11月には、セント・ポールズ校のドイツにおける姉妹校であるオットー・フォン・タウベ・ギムナジウム校とも姉妹校提携を結びました。
姉妹校提携に向けての協議では、事前に担当者間で調整を行いますが、実際の協議と姉妹校提携には校長が一人で訪問し、相手校の校長と協議及び姉妹校提携を行いました。英国やドイツの学校との交渉では校長どうしの積極的な意見交換が必要だと感じました。

保護者の方の反応について

Q:留学や異文化交流への保護者の方の反応について教えてください。

時習館高校:保護者向けの学校評価アンケートにおける「学校は、学校行事や国際交流など特色ある教育活動を行っている」という項目について、5段階評価(5が最も良い)での平均値が、平成24年度は4.2、平成25年度が4.3と、いずれも高い数値を示しています。保護者の方からは本校の国際交流事業について、高い御理解と御支援をいただいています。
ホストファミリーとして留学生を受け入れた家庭からは「時間が足りないと感じられるほど、充実した1週間であった」、「見送りの時には、もっと一緒にいたい気持ちであった」など好意的な御意見を多くいただいています。一部の保護者の方からは、ホストファミリーを受け入れたにもかかわらず、必ずしも姉妹校へ派遣される保証がない点についての御意見も頂戴しますが、生徒のみならず、多くの保護者の方に国際交流の素晴らしさを知っていただいています。中には受け入れを機に、その後も家族間で継続的な交流をしている家庭もあります。

生徒の傾向と成長について

Q:交換留学に参加する生徒はどのくらいいて、どのように選考しますか?また、参加後にどのような変化が見られますか?

時習館高校:交換留学へ参加する生徒は面接や書類等による審査で選抜し、各校へ4名の生徒を派遣しています。生徒の希望者数は、3校による受け入れとなった平成24年度以降は毎年50名ほどで、国際交流に対する関心の高い生徒が多く応募しています。選抜された生徒は渡航までの約2ヶ月間、語学や文化の研修を積みます。この2ヶ月間の研修を経て生徒の意識は大きく変化し、実際に姉妹校での滞在を終える頃には様々なことを学び、大きく成長して帰国します。
先般実施した文部科学省による「高校生の留学に関する意識調査」では、本校の7割以上の生徒が「将来、留学したい」と回答しており、本校の国際交流事業を通して経験を積んだ後に、自主的に留学しようとする生徒が多く出ると期待されます。現在、1年以上の長期留学をする生徒はいませんが、本校での交流を契機に、長期留学を視野に入れる生徒が増えることを期待しています。

受け入れについて

Q:姉妹校から留学生を受け入れる経験学習効果を最大化するために、特に工夫していることは何ですか?

時習館高校:受け入れ時には、1・2年生全クラスの英語の授業に留学生が参加する体制を整えます。本校の生徒は、日本文化に関するプレゼンテーションをした上で各国の文化についての意見交換をしたり、与えられたトピックから自由に会話を展開したりします。また、留学生は1年生の調理実習や授業後の部活動にも参加し、その世話役は生徒が担います。意見交換や会話、実習や部活動でのやりとりについては事前の準備を行わないため、生徒は生のコミュニケーションの奥深さを味わうことになります。自分の意思が伝わった時の喜び、意思が伝わらない時や相手の話すスピードについていけない時の苦労は、教科書による学習では決して得ることのできないものです。

SSHでありSGHアソシエイトであることの相乗効果について

Q:SSHとしての研究活動を姉妹校との交流を絡めて実施されているのはユニークですね。
運営のコツ、大変なポイント、面白さなど教えてください。

時習館高校:本校はここ数年、学校の重点目標を「SSHとグローバル教育の高いレベルでの融合」として教育活動を展開してきました。また「スーパーグローバルハイスクール(SGH)(※2)」アソシエイトに選ばれたことは、生徒、教員、保護者、同窓生にとって大きな誇りであり、姉妹校の先生も喜んでいます。
これまで本校では、SSH事業の「科学技術人材育成重点枠」における最終目標として、姉妹校関係をベースとした科学的内容の研究に関する『日英独の高校生による科学技術に関する研究発表会』を開催してきました。この発表会を成功に導くためには、姉妹校との連携が特に重要です。姉妹校の先生と本校教員との間で情報交換を行う過程では、本校内においても数学科および理科の教員と英語科の教員との間で連携を図ることを心がけています。また、姉妹校の先生から本校の教員が気づかない点を教授されることが多々あり、物事の捉え方の違いに気づかされ、とても興味深い経験をしてきました。現在は教員間だけでなく、生徒間でのより良い情報交換の在り方について研究しているところです。

メッセージ

Q:留学に興味のある高校生、その保護者の方にメッセージをお願いします。

時習館高校:留学に興味のある皆さんには、外国語はもとより、日本をも含めた各国の文化や歴史、国家間のつながりや社会情勢、さらには人文・社会・自然など分野を問わない一般教養など、どのようなことにも広く興味と関心を抱き、様々な活動に積極的に取り組んでいただきたいと思います。
日本人は自国のことをよく知っていると認識しがちですが、海外の方にそれを説明するとなると、外国語の運用能力以前にその事柄に関する知識の欠如に気づくことが多々あります。下記「英国に留学した生徒の感想」を御一読ください。
これまでの姉妹校との交流から、国際交流で最も大切なことは自分の意見をしっかり述べることだといえます。海外の生徒との会話では、どのような事象に対しても相手の意見を聞くとともに自分の意見を述べ、議論できることが大切です。ぜひ日頃から、授業で学んだことや日常の出来事について自分の意見をもち、それを海外の方と共有できるようにしておいてください。

英国に留学した生徒の感想

~9日間の姉妹校への訪問を通じ、参加した生徒は日本では得られない貴重な経験を積みました。
  下記は、ひとりの生徒の感想文の抜粋です。~

私が英国に来て感じたことは、言語の壁ではなく文化の壁です。
私はこの交換留学に参加するまでは海外に行った経験がありませんでした。そのため、海外で生活するためには英語が何よりも大切だという固定観念がありました。自分の英語もほとんど通じないのではないかと心配していました。しかし、実際には語学面で困ったことはそれほど多くありませんでした。英国の人の英語を聞きとるのは少し苦労しましたが、自分が話す英語は思っていた以上に通じました。英国に着いたばかりの頃は、文法や語法のことばかりを気にして英語を話していましたが、だんだんそういったことを気にせずに話せるようになりました。一週間の間に自分の使う英語がちょっと変化したなと自分でも感じられました。
また、会話の内容にも困りました。文化圏が違うので、どんなものが好きなのか、英国にはどんなものがあるのかといった話題を見つけるのは難題でした。
さらに、どういった時に自分が向こうの人の英語を聞きとれるのか分かるようになった気がします。向こうの人が何を言おうとしているのか想像がつく時は聞きとれるのですが、そうでない時はどれだけゆっくり話してもらっても理解できませんでした。やはり、文化的な背景の違う人との会話では共通認識事項が少ないため、理解しづらいのではないかと感じました。こういった意味合いで私は文化の壁を感じました。

グローバル教育最前線キーワード

※1.スーパーサイエンスハイスクール(SSH)
将来の国際的な科学技術関係人材を育成するため、先進的な理数教育を実施する高等学校等を「スーパーサイエンスハイスクール」として指定し、学習指導要領によらないカリキュラムの開発・実践や課題研究の推進、観察・実験等を通じた体験的・問題解決的な学習等を支援する事業。平成14年度開始。
※2.スーパーグローバルハイスクール(SGH)
国際的に活躍できるグローバル・リーダーを高校段階から育成することを目的に、生徒の社会課題に対する関心と深い教養、コミュニケーション能力、問題解決力等の国際的素養を身に付けるための教育に取り組む高等学校等を指定して重点的に支援する事業。平成26年度開始。
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