嫌な自分を変えたい。
それが留学のきっかけ
小中学校は受験をして私学に通いました。学校選びも受験自体も両親の影響が大きく、その選択には全く後悔はありませんでしたが、中学3年のときに「これからの道は自分で考えたい」という自立心が芽生えました。ところがいざ、自分は何ができるのか、何がしたいのかを考えると何もない。そればかりか自分の悪い面ばかりが見えてきたのです。こんな自分を変えたい、そのために異文化の中に身を置いて視野を広げたい。それが留学を考えたきっかけです。
留学先をドイツにしたのは、小学校のときに香港に住んでいたことがあり、英語はある程度できていたので別の言語を学びたいと思ったから。ドイツの美しい建築物やクリスマスマーケット、お城などにも漠然と憧れていました。
慶應義塾大学法学部政治学科1年生
鈴木彩菜(すずき・あやな)
事前準備で語学の勉強はとくに重要。
日本についてもしっかり調べておきたい
現地の家庭にホームステイをして現地の学校に通い、日常生活を通じて異文化交流をしたいと思い、短期ではなく1年間の交換留学を希望しました。高校1年に進学するときにYFU日本国際交流財団(以下YFU)newwinという団体が運営する交換留学に参加しました。YFUでは留学の1年前から選考試験を受け、留学に必要な準備を進めました。
事前準備では、語学の勉強は特に重要。いくら準備してもしすぎることはないと思います。私はドイツ語の参考書やCD教材、YouTubeも使って勉強しました。
次に重要なことは、日本についての勉強です。たとえば「和」とは何か、柔道と空手の違いは何かなど、YFUの経験者から、外国人が日本人によくする質問などを聞いて、自分で答えられるように調べていました。今まで当たり前に思っていた日本文化や習慣、常識、日本史などについても調べ、現地の言葉でどう言うかも調べてノートにまとめました。ノートは現地にも持って行って、何か聞かれたらノートを見て答えていましたね。
私が滞在したのは日本人が一人もいない小さな村だったので、出会う人にとって私が初めての日本人かもしれない。そういう緊張感を常に持って、日本人として恥ずかしくない行動を取るように努めていました。日本についてもきちんと紹介したかったので、このノートはとても役立ちました。
上:YFUの仲間たちと、憧れていたクリスマス
マーケットを見に行きました。
下:ドイツの最高峰、ツークシュピッツェ山
(Zugspitze)の山頂でホストファミリーと。
語学力不足による孤独感に
くじけそうになったことも
ドイツ語の勉強はしていきましたが、それだけでは十分ではありません。ドイツの学校の授業はディスカッションが多く、最初はほとんど発言できませんでした。成績はペーパー試験と日頃の授業態度で評定されるので、発言をしなければいい成績はもらえません。先生に勉強法を聞いたり、ホストシスターに助けてもらったりしながら少しずつ発言ができるようになっていきました。
もっと辛かったのは、会話ができないことからくる孤独感です。会話の内容がよくわからなくてもまわりに合わせて無理に笑っている自分が嫌でした。ドイツ語ができない私にみんなが気をつかっているのではと思うと、友だちの輪に入るのが怖くなってしまったこともあります。このときにもホストシスターにとても助けられました。話せない辛さを親身になって聞いてくれ、ドイツ語の勉強も手伝ってくれました。冬の初めにはこの問題も克服でき、今ではいい経験だったと思います。
上:FASHINGという
ドイツのお祭りの日は、
仮装して登校するのが恒例。
下:ホストシスターと。落ち込んだとき
勉強法に悩んだとき、いつも助けてくれました。
トルコ人の親友が、
異文化理解の本当の意味を教えてくれた
留学中に楽しかった思い出はとても多く、すべてを伝えることは不可能です。中でも最も幸せだったことは、第二の家族を持つことができたことです。最初はお互いに気をつかってどことなくよそよそしい雰囲気がありましたが、日常生活を共にする中で、本当の家族のようになれたと思います。ホストシスターやホストブラザーともふざけ合ったり、ときには兄弟げんかをしたり。ささいな出来事すべてが楽しい思い出です。
特に印象に残ったできごとを一つ上げるとしたら、私の親友、トルコ系移民二世との出会いです。彼女からは祖国のすてきなところや文化の素晴らしさについていろいろ教えてもらいました。彼女はそれまで私が持っていたイスラムに対する一切の偏見を取り払ってくれました。その国のやり方などに好感が持てなくても友だちが一人いればその国全体を嫌いになることは絶対にありえないのだと気づけたのは彼女のおかげです。
異文化を理解することは、あらゆる場面において不要な対立をなくすことにつながると、私は信じています。
ホストファミリーとレストランで食事会。
多様な価値観に出会って到達した
「他者への寛容さ」
留学して得たことはたくさんありますが、一番大きいのは価値観の多様性に気づけたことです。ひと言でいえば「視野が広がった」ということなのかもしれませんが、そのような言葉では表しきれないほど大きな衝撃を受けました。宗教、信念、社会問題への意見から、友だち付き合いや家族愛のあり方に至るまで、本当に良い意味でカルチャーショックを受けました。異文化を知ったことで「他者への寛容さ」を持てるようになったことが今の私の中にも活きていると感じます。
また、帰国してから、友だちに「すごく変わったね」とよく言われます。自分でもそう思います。以前の私はとても人見知りでした。でも、ドイツでは自分から話さないと何もはじまらない。困ったことがあっても自分から助けを求めなければだれも助けてくれません。常に「自分から行動する」ことが求められる日々を過ごしたことで自然と強くなったと思います。
クラスメイトたちと。
無邪気にチャレンジできる
高校時代にこそ留学してほしい
帰国してドイツ語検定を受け、準1級をとりました。吸収の早い高校時代に留学したからこそできたのだと思います。語学の習得は絶対に早いほうがいいと思います。
また、自分の経験と、帰国後に様々な留学生を見てきて言えることですが、多くの高校生は留学中に自分の関心分野を発見したり、将来の夢に気づいたりします。大学生になってからでは、留学して自分の本当にやりたいことに気づいたとしても軌道修正が難しいでしょう。私も高校生の時期に留学したからこそ自分の一生を変えてしまうような気づきを得られたのだと思います。
留学は、異文化を深く理解すると同時に自分を見つめ直すよい機会。一生の付き合いになるような友だちが世界にできますし、第二の家族にも巡り会えます。留学をしていなければ今の私はないと言っても過言ではありません。ぜひみなさんにも同じ経験をしてほしい。もしできるなら、いろいろなことを柔軟に吸収でき、無邪気にチャレンジできる高校生の時期こそ留学してほしいと思います。
上:地域の社交ダンスサークルの発表会。
ドイツは部活動よりもこのような地域サークルのほうが盛ん。
下:クラスメイトたち全員そろって記念撮影。
プロフィール
鈴木 彩菜(すずき・あやな)
高校1年次に日本YFU国際交流財団を通じてドイツに1年間の交換留学。帰国後、日本の高校に一年遅れで復学。
現在は、慶應義塾大学法学部政治学科1年生。将来は、異文化理解や国際協力に関わる仕事に就くのが夢。